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2026.02.21案内人:成川 潤

刃物が木に吸い付く、あの瞬間の快感。天然乾燥材だけが持つ、繊維の粘りと色気。

プロの木工家がJunshinの板に鉋(かんな)やノミを入れたとき、
最初に口にされるのは「刃の当たりが、市販の材とは全く違いますね」という驚きの声です。
刃物が弾かれることなく、まるで木の中に吸い込まれていくような、あの独特の手応え。
私たちはそれを「木の粘り」と呼びますが、この粘りこそが、
天然乾燥という手間暇をかけた手法だけが残せる、最高のご褒美なのです。

細胞を焼き殺さない、風の乾燥

現代の木材流通の主流である人工乾燥(キロンドライ)は、いわば「木を焼く」工程です。
高熱で短期間に水分を絞り出すため、木の細胞は破壊され、
木を繋ぎ止めている大切な油分や樹脂までが失われてしまいます。
そうなると、木はカサカサとした「枯れ木」の状態になり、加工すると繊維がボロボロと崩れやすくなります。

一方、阿賀野の里山で数年かけて風に委ねる天然乾燥は、木の細胞を生かしたまま、
水分だけをゆっくりと抜いていくプロセスです。
細胞が壊れていないからこそ、繊維同士がしっかりと手を繋ぎ合い、
刃物に対してしなやかな「粘り」を見せてくれるのです。
この粘りがあるからこそ、削りカスはパラパラとした粉ではなく、
シュルシュルと長く、光を透過するほど薄いリボンのように剥がれていきます。

仕上げに宿る「色気」の正体

粘りがあるということは、仕上げた後の肌理(きめ)が非常に細かくなるということです。
天然乾燥材を丁寧に磨き上げたとき、木の内側からじわっと滲み出てくるような艶。
これを私は「木の色気」と呼んでいます。これは表面に塗った塗料の艶ではなく、
木そのものが持っている油分が、研磨によって表面に浮き出てきたものです。

この色気は、人工乾燥材には逆立ちしても出せません。
光を当てたときに、木目の奥深くから複雑な反射が返ってくる。
その官能的なまでの美しさは、作品に圧倒的な「生命感」を与えてくれます。
あなたが削る一削り一削りが、木の魂を呼び覚ます作業になる。
その贅沢な手応えを、ぜひあなたの工房で実感してほしいのです。

素材が作り手の技術を「引き出す」

良い素材は、作り手の技術をワンランク上に引き上げてくれます。
逆目(さかめ)が起きにくく、意図した通りに刃が通る。
それは作り手にとって、これ以上ないストレスフリーな体験です。

「この木なら、もっと薄く、もっと鋭いエッジが出せる」

そんなインスピレーションを素材から受け取れるのは、天然乾燥材を扱う表現者だけの特権です。
阿賀野の風が育てた「粘りと色気」。あなたの作品に、この言葉にできないほどの説得力を添えてみませんか。

案内人:成川 潤 [Junshin-潤森- 代表 ]
林業家、木工家、ウッドライフクリエイター
新潟県阿賀野市の里山を拠点に、あなたと森を繋ぐ「つなぎ役」を務めています。

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